横溝正史のミステリー。
先日もBS NHK 『シリーズ深読み読書会』で横溝作品の講談会が放送されました。
今回は『悪魔の手毬唄』。
なんともこの物語と同じ七月下旬でありました。
母の実家が岡山県の総社なので、悪魔の手毬唄は原作だけでなく、ドラマも映画も舞台背景がファミリアで、金田一シリーズで1番好きな作品です。(舞台になった鬼首村のモデルは、総社のお隣、現在の倉敷市真備町岡田地区だそうです)
そして、見立て殺人に使われた あのおどろおどろしい悪魔の手毬唄は、横溝正史の自作だったそうです。
『鬼首村 手毬唄』(原文)
うちの裏のせんざいに
すずめが三匹とまって
一羽のすずめのいうことにゃ
おらが在所の陣屋の殿様(とのさん)
狩り好き酒好き女好き
わけて好きなは女でござる
女たれがよい枡屋の娘
枡屋器量よしうわばみ娘
枡ではかって漏斗で飲んで
日がないちにち酒浸り
それでも足らぬとて返された 返された
二番目のすずめのいうことにゃすずめが三匹とまって
一羽のすずめのいうことにゃ
おらが在所の陣屋の殿様(とのさん)
狩り好き酒好き女好き
わけて好きなは女でござる
女たれがよい枡屋の娘
枡屋器量よしうわばみ娘
枡ではかって漏斗で飲んで
日がないちにち酒浸り
それでも足らぬとて返された 返された
おらが在所の陣屋の殿様(とのさん)
狩り好き酒好き女好き
わけて好きなは女でござる
女たれがよい秤屋の娘
秤屋器量よしじゃが爪長娘
大判小判を秤にかけて
日なし勘定に夜も日もくらし
寝るまもないとて返された 返された
三番目のすずめのいうことにゃ
おらが在所の陣屋の殿様(とのさん)
狩り好き酒好き女好き
わけて好きなは女でござる
女たれがよい錠前屋の娘
錠前屋器量よしじゃが小町でござる
小町娘の錠前が狂うた
錠前狂えば鍵あわぬ
鍵があわぬとて返された 返された
さて、手毬唄のいくつかは、そのリズムによって手毬遊び以外にお手玉やその他の遊びにも使用されていました。
先日、母の友人から伯母のボケ防止のためにお手製のお手玉をいただいたので、早速 伯母に差し上げたら・・・
〽️ イチレツ ランパン ハレツシテ
ニチロセンソウ ハジマッタ・・・♪
と、歌い出した!
お手玉しながら。
えー、なにその唄、戦歌ですか 😱😱😱❗❓
なんかね、伯母も母も小さい頃のお手玉遊び時にこの唄を歌ったらしい。
二人とも途中で歌詞が思い出せなくなったので、早速ググってみた。
すると検索結果にこれが結構ヒットするではありませんか。
みなさま、やはり母親やおばあちゃんから聞いて興味を持ったようで。
しかるにここで、この唄が元は「数え唄形式の手毬唄」だったことを知るのでした。
そういえば悪魔の手毬唄の文中、多々羅放庵氏が鬼首村手毬唄の考察で言ってましたね。
「手毬唄の性質上、数え歌形式が1番多い」(横溝正史 金田一耕助ファイル12 悪魔の手毬唄 角川文庫)と。
で、この唄の歌詞ですが、これがもう、日露戦争史なわけで。
それではいってみましょう、『一列談判』。
- 一列談判破裂して
- 日露戦争始まった
- さっさと逃げるはロシヤの兵
- 死んでも尽すは日本の兵
- 五万の兵を引き連れて
- 六人残して皆殺し
- 七月十日の戦いに
- ハルピンまでも攻め破り
- クロパトキンの首を取り
- 東郷元帥万々歳
まあ、ご時世というか、えぐい歌詞ですよね。
6人残して皆殺しとか・・・。
欲を言えば、どうせなら七月十日とともに西暦も欲しかった。
歌で覚える日本史、的な・・・。
(あ、ところでこれも七月のお話じゃないですか。偶然!)
数え歌+岡山といえば、祖母から教わったこんなのもあります。
一人来りゃ
二人来る
みっともねぇ子が
寄って来る
いつ来ても
むりばぁ言う
なんがあっても
やりゃぁせん
こんど来たら
戸を閉める
バリバリの岡山弁ですね(笑)
横溝正史氏は知ってたかな、この唄・・・。
🏀🏀🏀🏀🏀🏀🏀🏀🏀🏀
手毬唄もお手玉唄も元は童謡ですが、そういえばよく知られている童謡の蹴まり唄「山寺の和尚さん」なんか、坊主が蹴まりしたさに猫を捕まえて袋詰めにして鞠の代わりにした挙句・・・という、聖職者にあるまじき身勝手で欲丸出しの動物虐待の唄だし、昔の童謡は童話と同じで時代背景も手伝ってか残虐非道な内容が多くて、現代からすると超ブラックですよねー。
平和な世の中、万々歳!